《CowPlus+通信 Vol.2》
今回は、「夏場の蹄管理のポイント」について解説します。特に蹄トラブルでお悩みの方はぜひ参考にしてみてください。
夏場は暑いため牛の起立時間が延長し、その結果、蹄血ぱんや蹄底潰瘍が増えます。まずはその理由について解説していきましょう。
起立時間の延長理由と体温の変動
夏場に牛の起立時間が延長するのは、牛は寝て(座って)いるとお腹が地面に接触しているため暑く、立っていた方がお腹(ルーメン)が冷やされて涼しく感じることが理由です。
夏場における牛の体温変動については、次のような報告があります。
- 寝ている牛の体温は、1時間に0.5℃上昇
- 起立時の牛の体温は、1時間に0.25℃下降
上記の体温変動の報告からわかるとおり、牛は立っていた方が体温が下がりやすく涼しいため、立ち続けてしまうのです。
特に夏場は、牛舎や飼養スペースの気温に配慮しながら、牛が座ってくつろげる涼しい環境を作るように心がけると良いでしょう。大型扇風機やミストの使用、牛舎の屋根の工夫などについては、「牛の熱中症と応急処置について」の記事を参考にしてみてください。
気温以外で気をつけたい要因
夏はサシバエが増え、牛はサシバエに刺されると痛くて寝ていられません。また、牛はサシバエを嫌がって1か所に集まる習性があります。これは、群れになってサシバエから自分の身を守るための行動ですが、牛が密集してしまうため暑くなり、余計に暑熱ストレスを感じる原因になってしまいます。
サシバエ対策の方法は、「サシバエ発生源(卵~ウジ)対策」と「成虫対策」に分かれますが、成虫になる前に対策しておくことが大切です。特に卵やウジは熱と乾燥に弱く、殺虫剤による駆除が有効なため、成虫が発生しはじめる春より前に清掃と駆除を徹底的に行いましょう。
(KAKINOKI)
サシバエ対策の方法については、明治飼糧さんのHPが分かりやすくておすすめです!
https://www.meijifeed.co.jp/business/qa/q006.html
足元の健康と全身状態の関係
立ちにくい・歩きにくい・足が痛いなどのトラブルを抱えた牛は、寝起きがしにくいため飲水や採食を諦めてしまう傾向があります。そのため、寝起きの回数を減らすために一気に食べて一気に水を飲みますが、飲水・採食量や頻度は、全身状態に直結します。牛の最高のパフォーマンスを維持するためにも、定期的に削蹄してあげましょう。
予防的削蹄のコツ
土踏まず(マドリング)を深く削蹄することによって、起立時間の延長による血ぱん・潰瘍が予防できます。夏場の削蹄は、暑すぎて牛のストレスになってしまうことがあるため、できるだけ夏前に済ませておいた方が良いでしょう。
夏場のダメージによる影響で9〜10月は蹄病が多いため、予防・応急処置をかねての削蹄がオススメです。
【削蹄師】柿木 勇人 [ 霧島削蹄所 ]
【経歴】1級認定牛削蹄師。酪農ヘルパーとして15年勤務したのち、鹿児島県霧島市で霧島削蹄所を開業。九州全域を駆け回りながら、ダッチメソッドで牛に優しい削蹄を実践。
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