《CowPlus+通信 Vol.5》
今回は、「牛の”カゼ”とは?〜病気の分類3つを簡単に解説〜」というお話です。
概論的なお話になりますが、まずは基本からしっかり確認していきましょう!
発熱、咳、鼻水など…
こんな症状があったら、”カゼ”を疑いますよね?
診察してもらう獣医さんにも、『うん、カゼだね〜』なんて言われることが多いのではないでしょうか?
では、牛の”カゼ”は何種類あるかご存知ですか?
なんとなく理解しているつもりだけど、言葉では説明できないなぁ…という方は、この機会に改めて知識を深めておきましょう!
※「お腹のカゼ」と表現される腸炎もありますが、今回は呼吸器のカゼについてご紹介します!
感染と炎症が起きる部位の違いとは?
細菌やウイルスなど、原因となる病原体によっても”カゼ”の性質が異なるのはもちろんですが、牛の”カゼ”は人間とは異なり、2種類以上の病原体による複合感染が原因となるBRDC(牛呼吸器病症候群)という病態が特徴的です。
感染と炎症が起きる部位によって、主に次の3つに分かれます。
気管炎
のどの太い気管に感染や炎症が起こり、痰がらみの咳や鼻汁がみられるのが特徴です。気管のゴロゴロ音が肺の方まで響いて聞こえることはありますが、基本的には肺雑音はありません。
気管を例えるなら、木の幹の部分です。
気管支炎
気管のもう少し奥の、肺に空気を届けるために細かく枝分かれした部分を気管支といい、そこに感染や炎症が起こると、肺の聴診で雑音が聞こえます。
気管支は気管よりも細く、炎症産物などで中がより狭くなることで、呼吸がやや苦しく・速くなることがあります。
気管支を例えるなら、木の枝の部分です。
肺炎
気管支のさらに奥の奥、肺の実質(空気が入る袋の部分)に感染や炎症が起こると、気管支炎よりもさらに重い音が聴診で聞こえます。咳や呼吸の状態もひどく、悪化すると全身状態にも影響が及びやすいです。
肺を例えるなら、木の葉っぱが集まっている部分です。
カゼの原因になるものとは?
カゼをひいてしまう原因はもちろん病原体の感染ですが、それ以外にもカゼをひきやすくしてしまう要因があります。
- 細菌やウイルスなどの感染
- 免疫力の低下
- 気温差(朝晩の寒暖差など)
- 密飼い
- ストレス
- 換気不足
- アンモニア刺激
- 不適切な衛生管理
特にストレスがかかっていると免疫力が下がりやすくなるため、カゼ対策のためには飼養環境の見直しが必須です。毎年カゼが多発してパンデミックになってしまう…という牧場さんは、牛群管理や飼養環境の改善が必要かもしれません。
また、牧場内でカゼが蔓延しやすい傾向がある場合は、カゼをひいた子牛を隔離する方法も有効です。柵越しに子牛同士が接触できる環境では直接病原体を移し合ってしまうため、注意してください。
カゼが悪化するとどうなる?
感染する部位が深いほど、カゼは重症化しやすいです。病原体が肺の奥、細胞の中に入り込んでしまった場合には抗生物質が届きにくく、治療に時間がかかる傾向があります。カゼが悪化すると、次のような状態になってしまうため注意しましょう。
- 呼吸困難
- 完治不可
- 慢性肺炎化
- 増体率の低下
命がつながればまだ良いかもしれませんが、結果的に市場取引価格が下がってしまい、かかった治療費を考えると利益がほとんど出ないケースも考えられます。
そのような状態にさせないためにも、カゼを予防しながら早期発見・早期治療に努めましょう。
まとめ
基本的に、感染や炎症が起きる部位が深ければ深いほど重篤な状態になることが多いため、よく覚えておいてください。
また、肺炎が重症化すると完治が難しくなり、最悪の場合死亡してしまうケースもあります。それだけでなく、慢性肺炎は市場価格が下がる原因にもなるため、普段からカゼ対策をしっかり行いましょう!
(MERI)
BRDCの詳細や予防方法について詳しく知りたい場合は、こちらのゾエティスさんのサイトがわかりやすいです♪
一番のカゼ対策は、まず敵を知ることです!
冬がくる前に万全の対策をして、牛たちの健康を守りましょう。
【代表・獣医師】MERI:松村 恵里 [ MERI writing lab ]
【経歴】北海道農業共済組合で獣医師として7年勤務したのち退職。2023年4月からWebライターとして活動中。診療経験は牛(乳牛、肉牛)、馬(サラブレッド)。猫2匹と暮らす1児の母。
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