子宮内膜炎の治療法~2つのアプローチを解説~

子宮内膜炎の治療法 治療

《CowPlus+通信 Vol.6》
今回は、テーマ募集でリクエストをいただいた”繁殖”のなかから、「子宮内膜炎の治療法」について解説します。

産後なかなか受胎しなかったり、リピートブリーダーになってしまったりと、なにかと厄介な子宮内膜炎。牛飼いさんなら一度は苦労されたご経験があるのではないでしょうか?

子宮内膜炎の治療のアプローチ方法には、大きく分けて「感染を抑える方法」「傷んだ子宮内膜を修復する方法」の2つがあります。子宮内膜炎を早く治すために、ぜひ参考にしてみてください。

子宮内膜炎の実態とは

まずは、子宮内膜炎の実態から解説していきます。

子宮内膜炎とは、細菌などの病原体が子宮内に入り込み、子宮内膜に炎症を起こす病気です。
通常、分娩時に病原体が入り込んでも分娩後3週間ほどでほとんど排出されますが、それ以降も子宮内に感染と炎症が残っていると子宮内膜炎と診断され、治療が必要になります。

子宮内膜炎のリスクが高いのは、次のような牛です。

  • 胎盤停滞(3.6倍)
  • 死産(3.1倍)
  • 初産牛(1.8倍)
  • 介助/牽引分娩(1.7倍)
  • オス子牛分娩(1.5倍)

NOSAI北海道のデータ(2011年)より

カッコ内は、正常な牛と比較してどのくらい子宮内膜炎のリスクが高いかという比較値です。子宮内膜炎があると卵巣の周期にも影響を及ぼすため、発情周期が短縮したり、乱れて不定期になったりします。

治療法の選択肢

続いて、治療法の選択肢についてです。治療法は大きく分けて2つのアプローチ方法があります。

感染を抑えるアプローチ方法

子宮内膜炎の感染を抑えるには、次のような方法があります。

  • (筋注)抗生物質:エクセネル1gを単回投与
  • (筋注)PG
  • (薬注)抗生物質
  • (薬注)2%イソジン
  • (薬注)50%ブドウ糖

抗生物質やイソジンを子宮内に注入する方法が一般的ですが、最近ではエクセネル1gを注射で単回投与する方法も有効との報告があります。(出荷制限がかかってしまうため、乳牛には不向きかもしれません。)

傷んだ子宮内膜を修復するアプローチ方法

感染や炎症によって傷んだ子宮内膜の修復を促すには、次のような方法があります。

  • (経口/筋注)ビタミンADE高用量投与(ビタミンAとして250万単位)
  • (経口)亜鉛製剤
  • (経口)スターターor育成飼料の給与(タンパク充足率を上げるため)
  • (薬注)キトサン

注射や薬注だけでなく、エサの管理面からも子宮内膜炎の治癒を促せます。普段給与しているエサの内容と相談しながら、不足しているものがあれば使ってみてください。

まとめ

今回は子宮内膜炎の治療方法について解説しました。2つのアプローチを組み合わせると治癒効果が高まるという報告もあります。ぜひ取り入れてみてくださいね。

ちなみに、ビタミンADE配合飼料の例としては「ドン八ヶ岳(全薬)」などがあります。

子宮内膜炎の予防対策については、また改めてカウプラス通信で解説しますのでお楽しみに!

MERI writing lab

【代表・獣医師】MERI:松村 恵里 [ MERI writing lab ]

【経歴】北海道農業共済組合で獣医師として7年勤務したのち退職。2023年4月からWebライターとして活動中。診療経験は牛(乳牛、肉牛)、馬(サラブレッド)。猫2匹と暮らす1児の母。

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