子宮内膜炎の予防対策(環境編)

子宮内膜炎の予防対策(環境編) 予防

《CowPlus+通信 Vol.9》
前回配信した【栄養編】に引き続き、今回は「子宮内膜炎の予防対策(環境編)」です。

ではさっそく、分娩前と分娩時のシーンに分けて解説していきます。

分娩前に気をつけたいポイント

分娩前に気をつけたいポイントは3点です。

寝起きしやすい環境を作る

胎子が母牛のお腹の中で動くため、母牛は寝起きや寝返りが増えることが特徴的です。飼養スペースが狭く、床の状態が悪い場合、寝起きが不自由になるため子宮捻転や胎子失位の発生率が上がります。お産事故防止のために、広いスペースとフカフカな床を作ってあげましょう。

敷料厚は15cm以上を目標にフカフカなベッドにしてあげることがポイントです。
(15cmは大人の手のひらが縦に真っ直ぐ入る深さ)

(参考)牛床面積
◎フリーストール
→1頭あたり3.0〜3.5平方メートル以上
◎フリーバーン
→1頭あたり11平方メートル以上

上記の面積を確保してあげるのが理想です!

牛温恵を衛生的に留置する

牛温恵を膣内に留置する前に、一度ストッパーと体温センサーを取り外して洗浄・消毒しましょう。
留置時も外陰部の洗浄を忘れずに行い、衛生的に取り扱うようにしてください。

分娩予定2週間以内の牛群変更(移動)は避ける

ストレスで食欲が低下するケースがあるため、なるべく分娩予定日近くの移動や牛群変更は避けましょう!

分娩時に気をつけたいポイント

分娩時に気をつけたいポイントは2点です。

粒度の小さい敷料を避け、長藁を敷く

粒度が小さく細かい敷料(ノコクズなど細かいタイプ)は、分娩時に産道内に侵入しやすいため、清潔な長藁を準備すると良いでしょう。これは生まれた子牛の臍帯炎予防にも効果的です

なお、分娩兆候を確認してから分娩房まで牛さんを移動させる方式の農家さんであれば、分娩房の床は敷料を入れずにマットのみでも良いと思います。

お産介助は衛生面を意識

難産や陣痛が弱い場合には、腟内に手を入れて胎子の向きを確認したり、胎子の足を引っ張り出したりすることもあると思います。その際は、直検用の長い手袋を装着するか、石けんや消毒液を使って手をきれいに洗ってから介助するようにしてください。
また、お産の途中で母牛の便が出てきてしまうこともあります。なるべく便を膣内に押し込まないように気をつけながら、その都度消毒液で洗い流すなど配慮すると良いでしょう。

まとめ

前回の栄養編に引き続き、今回は子宮内膜炎の予防対策(環境編)について解説しました。

飼育環境の面でも、子宮内膜炎予防のためにできることがたくさんあります!
ぜひいつものやり方を一度見直してみて、より良い環境づくりをしていきましょう。

笹崎先生

【獣医師】笹崎 直哉(Sasazaki Naoya)[ 笹崎牧場 ]

【経歴】鹿児島のシェパード中央家畜診療所にて7年3か月勤務し、和牛の診療に従事。うち4年間は大学院に通学し、博士号取得。退職後は長野県で開業。現在は牛を飼う獣医師としてジャージーと黒毛和種を計120頭飼養しながら、近隣農家の往診を行う。

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