《CowPlus+通信 Vol.20》
初乳管理。
繁殖農家さんであれば、切っても切れない重要なアクションのひとつですよね!
初乳給与の際に生まれた差は、一生かけても取り戻せないと言っても過言ではありません。
数々のセミナーや文献等でも初乳管理に関するテーマが多く取り上げられ、初乳の質、給与量、時間についてはある程度の推奨値が定まりつつあります。
今回はその中でも大切な、「初乳の質」について解説していきます。
初乳の質は〇〇で測るべし!
『そもそも、初乳の質って何で決まるの?』
と、疑問に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
大前提として、初乳給与の目的は「子牛が母牛から受動免疫を獲得すること」です。
よって初乳の質は、初乳中に含まれる母牛由来のIgG量(免疫グロブリンGの量)によって左右されます。
初乳の質は粘度や色調などの視覚情報でもある程度判断できますが、精密な判断はできません。そして結局のところIgG量が盲目化し、なんとなく不安だから…といって初乳製剤を併用している農家さんも少なくないのではないでしょうか。
一方で初乳製剤は多用できるような安価な製品ではないため、使用量は最低限に留めておきたいものです。
そこで今回は、高い精度で初乳の品質を確認できるアイテムである、デジタル式の「Brix計(ブリックス計)」をご紹介します。

このBrix計は「糖度計」または「ポケット屈折計」とも呼ばれています。
こちらを勧める理由は、何といっても取り扱いが容易であることです。
初乳1滴から測定可能である上に、ほんの数秒で結果が分かり、測定値が乳温に影響されにくいことが特徴です。

こちらの写真で紹介しているデジタル式のBrix計(アタゴ ポケット初乳濃度計 PAL-初乳)の最新モデルは31,900円(2026年1月現在)で購入でき、電池交換さえすれば半永久的に使用できます。
アナログタイプ(目で覗いて測るもの)なら1万円以下で入手できるものもたくさんありますが、やはりデジタルタイプの方が使いやすいと思います。

このBrix計で測定される数値を「Brix(ブリックス)値」と呼び、この値は「溶液中の固形分(可溶性固形分)の割合(%)」を示しています。
過去のElsohabyらの研究によると、Brix値とIgG濃度の実測値との相関性はr=0.72程度であり、強い相関があることが分かりました。
これらのデータをもとに最近では「初乳のBrix値22.0%以上がIgG濃度50mg/ml以上の保証値」と規定されています。言い換えれば、「Brix値が22.0%以上であれば初乳1ℓあたりに50g以上のIgGが含まれている」ということになり、この条件を満たす初乳こそが良質と認知されるようになりました。
これらの報告をもとにBrix計を利用した初乳の品質評価の目安を以下にまとめました。
- Brix値 20%未満:低品質のため給与すべきではない
- Brix値 20%以上:給与しても良いが、初乳製剤の併用を検討
- Brix値 22%以上:子牛への給与に最適
私自身、牛を飼う獣医師としてBrix計を日頃から愛用していますが、意外にも初乳Brix値が個体によってバラバラであることを実感しています。
妊娠末期において食欲等の健康状態に問題がなく分娩時も介助することもなかった正常な個体でも初乳Brix値が20%未満のケースがあり、以下のようにBrix値の高い凍結初乳を湯煎でゆっくりと温めて溶かし給与することがあります。
(なお、Brix値が20%未満の初乳は廃棄せず、代用乳の給与を始める前の移行乳として使用しています。)

一般的に給与する初乳の総量はIgG量として200g以上が理想とされているので、仮にBrix値22%の初乳であれば、1度に給与するのが困難であれば2回もしくは3回に分けてトータルで4ℓ以上を飲まれてあげられることが目安となります。
初乳の総量に関してはSNSで独自にアンケート調査(回答者:40人)を行ったことがあり、以下のようにIgG量として200g以上を目安としている方が大半を占め、250g以上を給与する方が58%を占めていました。
まだBrix値の測定をしたことがないという方は、新たに始めるにはさほどハードルが高くないアクションだと思います。
是非ともBrix計を利用した初乳の品質管理をスタートしていただき、その後の子牛の健康状態をモニタリングしてみてください。
参考文献:Elsohaby I, McClure JT, Cameron M, et al. : J Dairy Sci, 100(2),1427-1435 (2017)
初乳にまつわるよくある質問
ここでは、初乳に関してよくいただく質問と回答をまとめます。
- QBrix値は高ければ高いほど良い?
- A
高ければ高いほど良いです!
ちなみに、乳房炎の場合は一般的に電解質の含有量が上がり、乳糖(ラクトース)は下がります。乳糖は乳腺内で生成されるため、乳房炎の場合は生成量が低下します。
よって初乳においても同様のことが言えると考えられるので、絶対ではありませんがBrix値は下がると思われます。Brix値が低い場合にはご注意ください。
- Q血乳の場合はどうする?/初乳の殺菌方法は?
- A
基本的にはヨーネ病や牛伝染性リンパ腫などの伝染病の観点から、利用を控えてください。
一方、血液の混入が軽度でやむを得ず利用しなければならない場合には、パスチャライザーなどで低温殺菌すれば利用可能です。
低温殺菌に関しては、血乳ではなかったとしても、子牛の下痢低減効果や代用乳コスト削減などの観点でおすすめです!
家庭用低温調理器を使われている酪農家もいれば、以下のようなオリオンさんのパスチャライザーを使われている方もいらっしゃいます。
オリオン機器/初乳・移行乳加熱装置【パスチャライザーMAM40B・MAM30B・MAM12B】から引用
- Q冷凍初乳を解凍する湯煎の温度は?
- A
低温殺菌時と同様、60℃の湯煎で解凍する方法がおすすめです。
熱湯で湯煎してしまうと乳成分が変化してしまうため、温度管理にはご注意ください。
- Q子牛が初乳を飲まないとき、強制的に給与したいのですが上手に飲ませられるか不安です。何かオススメの道具はありますか?
- A
ミルクチューブがおすすめです。
チューブ(カテーテル)による初乳給与以外にも乳首のアタッチメントに変えれば通常の代用乳哺乳のシーンでも利用できます。
強制投与を行う際には誤嚥させないようにご注意ください。

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単純なご質問でもOKですよー!

【獣医師】笹崎 直哉(Sasazaki Naoya)[ 笹崎牧場 ]
【経歴】鹿児島のシェパード中央家畜診療所にて7年3か月勤務し、和牛の診療に従事。うち4年間は大学院に通学し、博士号取得。退職後は長野県で開業。現在は牛を飼う獣医師としてジャージーと黒毛和種を計120頭飼養しながら、近隣農家の往診を行う。

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